当社の千両(センリョウ)の栽培から収穫までを、ご紹介させていただきます。

正月飾り用の千両(センリョウ)の畑は自社圃場約8.5ha, 他生産者買い付け圃場約1.5haあり、国内では最大級の規模となります。 千両(センリョウ)の出荷は、当社がある茨城県神栖市の国内シェアで全国トップクラスであり、その神栖市では当社の栽培規模はNo.1となっています。当社の畑は神栖市周辺にあり、11月~12月の収穫時期になると、それぞれの畑で同時期に収穫作業を行います。

1.収穫までの流れ

竹簾(タケス)の中の畑で育てる

日差しを遮る楽屋

千両(センリョウ)の畑は、竹簾に囲まれた中にあります。
竹簾とは、竹を細長く割り、ステンレスで編まれたもののことで、直射日光に弱い千両(センリョウ)を守るために設置しています。竹簾は5~7年に1回交換する必要があります。

千両(センリョウ)に付いている紐は、真っすぐに成長させるためのもので、1本1本に紐を付けています。
千両(センリョウ)の成長に合わせて、その紐の長さを調整しています。

竹簾の内部にある千両(センリョウ)の畑の様子です。

竹スの中で育つ千両
千両(センリョウ)の竹簾の中
楽屋内で生育中の千両

収穫する

千両の収穫の様子
1.千両(センリョウ)の収穫の様子
千両の収穫の様子(手元)
2.千両(センリョウ)の収穫の様子
収穫した染料を運ぶ女性
3.収穫した千両(センリョウ)を運ぶ
青いシートの敷かれたタンブラー
4.収穫した千両(センリョウ)を入れるダンブラー
タンブラーに千両を入れる女性
5.千両(センリョウ)をタンブラーに入れる
タンブラーの千両をシートで保護する男性
6.千両(センリョウ)を保護

適量の千両(センリョウ)がタンブラーに入ったら、千両(センリョウ)を保護するためのシートで包みます。

タンブラーに詰めた千両をトラックに積み込む作業員
7.千両(センリョウ)をトラックに積み込み

タンブラーをトラックに積み込み、本社工場へ搬送します。

2.千両(センリョウ)の年間作業スケジュール

1月

楽屋の修理、解体、古くなった部分の交換(骨組みパイプや竹簾) 
病害虫によって収穫が十分でない圃場を解体したりする
圃場の中の掃除:年末作業の間にたまった枯葉や草を取り除いていく(枯葉や枯株は放置すると病害虫が広がる可能性がある)
元肥を入れる:遅効性の肥料や腐葉土を撒いたりする
 これにより微生物が増え春先に撒く肥料をより早く効率よく吸収させることができ、より成長を促す
農薬散布:殺菌、殺虫剤の散布する

2月~3月中旬まで

松植えの作業の為、基本千両の作業は入らない

3月下旬~5月

圃場の掃除、選定作業:溜まった枯葉、草の掃除 枯れた木や弱い木の選定作業
楽屋の修理:1月と同様
追肥作業:新芽が伸び梅雨前には花が咲くのでその成長を良くするため追肥する 
 主に即効性の化成肥料と肥効の長い有機肥料、病気に強くなるカルシウム剤を入れている
農薬散布:気温が上がり雨も降るようになると病害虫のリスクが高くなる為、2週~3週に1回のペースで散布していく
*この時期の準備を早く終わらせ開花期を迎えられると良い

ポットに入った千両の苗
千両(センリョウ)の苗

6月

花が咲く時期:この時期に無暗に圃場に入ると受粉の妨げになる為極力圃場には入らないようにする
農薬散布:雨が多くなるのでやはり病害虫の注意が必要 できればあまり圃場には入りたくないが天候次第では細かく散布を行う

千両の赤実の花
千両赤実花
千両の紅の花(6月頃)
千両紅花

7月~8月

花が終わり始め実が付きはじめる時期

千両の世話をする人たち

圃場の掃除、誘引作業:気温が上がり草が多く出始めるので除草作業は必須
 (草に放置は害虫の住処になったり、千両(センリョウ)に吸わせたい栄養を取られてしまう) 
 たくさん実が付いた千両(センリョウ)は倒れないように紐で誘引する作業が入る(約1か月半前後)
農薬散布:梅雨の後の湿気や、暑さによって病害虫が増える時期でもあるので適宜散布していく 
 気温の暑さによる薬害に注意が必要
・雨があまりにも降らない場合には潅水する場合もあり

9月

秋の新芽が伸びる時期
芽欠き:秋の新芽は収穫できる千両(センリョウ)には不要な部分な為、それを取る作業が入る
(その年の実の付き具合でこの時期の芽の出かたが変わる、実付きの良い年は芽が少ない)
農薬散布:病害虫の防除
圃場の掃除

夏きれいな緑色のの千両
夏の千両

10月

・松の収穫が始まると千両(センリョウ)の作業ができなくなるのでなるべく草や枯葉を取り除いておく
農薬散布

色づく前の緑色の実の千両
色づく前の千両

11月

収穫前に最後の農薬散布:千両(センリョウ)に薬の跡が残らない透明な薬剤で散布

色づき始め
色づき始め

11月下旬~12月

収穫時期 
実の色の出方を見ながら収穫する

収穫直前
収穫直前

3.千両(センリョウ)について

これからの千両(センリョウ)栽培についてみてみましょう。

千両(センリョウ)を育てる上で大事なこと

松と比べると非常に環境の影響を受けやすい植物なので細かい管理が必要です。
圃場の水はけ、枯葉や枯れた株の除去、楽屋の修理などをしっかり管理しなければよい千両(センリョウ)を作ることは難しいです。
20年~30年ほど前は環境の違いからかあまり手を加えなくてもよい千両(センリョウ)は沢山収穫できたようですが、近年ではしっかり管理しないと良い千両(センリョウ)は作れません。
良い肥料使ったりするよりも、日々の管理を細かくしっかりすることの方が良い千両(センリョウ)を作るうえで大事だと個人的には思っています。

昨今の千両(センリョウ)市場

昔と比べて生産者数、生産量が著しく減っているので市場規模は低くなってきています。
使われる等級も上位等級から下位等級へ変わってきています。(お稽古需要→スーパー等の花束需要へ変化)
農薬や資材の価格は上昇していますが、売上単価は減少しています。
昔と比べて病害虫の発生しやすい環境変化、高齢化による人手不足→辞める農家が増える→流通量の減少→千両(センリョウ)が使われない文化
と、近年状況は大きく変化しています。
今までとは違う栽培方法でより効率よくニーズに合った千両(センリョウ)を作る方法が必要となっています。

プランターによる千両(センリョウ)栽培 

プランターを使うことで病害虫被害の拡大を抑えます。
根の伸びが通常栽培に比べて限られた範囲になることで下位等級が多く取れる可能性がありますが、需要のある等級を効率よく収穫できる可能性にもつながります。

プランター栽培試験の様子
プランター栽培試験の様子
プランター栽培試験の様子
プランター栽培試験の様子

フラワーネットを使った誘引作業の削減

フラワーネットを千両(センリョウ)の株の上に広げることで、成長した千両(センリョウ)がネットにもたれるようにすることで、1本1本紐で誘引する必要がなくなり、人件費、作業時間の削減になります。

4.その他の千両(センリョウ)の栽培方法

他社の例ですが、竹簾を使用しない千両(センリョウ)の栽培方法もご覧ください。

遮光ハウス栽培

自然栽培